ダレカガナカニイル… (講談社文庫)

ダレカガナカニイル… (講談社文庫)

パブリッシャー
講談社
価格: ¥980

ダレカガナカニイル… (講談社文庫)のレビュー

SF恋愛物語
SF恋愛物語。「いま、会いにゆきます (小学館文庫)」より前にタイムパラドックスの手法を用いた恋愛作品があった(ホントはもっと昔にあるのだろうな…)。宗教を扱っているにも関わらずさわやかに、そして悲しく仕上がっている。
輪廻の蛇
結果的に時空を越えた壮絶な一人芝居を演じぜざるえなかった女と、その憑代にされた男との哀しき悲恋の物語。
それは、自分で自分の尾を飲み込む輪廻の輪の虜となったウロボロスの悲劇でもある・・

ラスト数ページで全てをひっくり返すどんでん返し。

実は誰々の正体は・・という「衝撃の結末物」には、いわゆる小説が小説であるが故のトリックを使ったものが少なくない。すなわち、読者は登場人物を想像はしても直接目にすることはないという特性を利用したものだ。映像化すれば全てが露呈しトリックがトリックの体をなさない。
有名なところではアイラ・レヴィンの「死の接吻」がそうだし(故に映画はつまらなかった)、最近では我孫子武丸の「殺戮に至る病」・貫井徳郎の「慟哭」がそうだ。
本編では、その心配は露ほどもない。一人の身体の中に二人の人格という、ともすれば陳腐といってもよい設定を用いているからだ。それでいて、少々のことでは驚かない「すれた」読者をもうならせる見事などんでん返しを演出する。読後に世界が反転する衝撃は、細部に渡る見事な整合性とともに、深い哀しみを伴い我々を包む。

探偵・被害者・犯人が同一のミステリとも読めるし、ある種のタイムトラベルものでもある(結末は悲劇だが、読後感はハインラインの『夏への扉』に通じるものがある)。そして、実は母親はどこにもいなかったのだという、恐怖小説ともとれるであろう。むろん、一人の男のただの妄想にすぎなかったととることも・・

ジャンル分け不要の佳作。

お勧め。




何も考えずにとにかく読んでみよう。
臨死体験、宗教、精神学、多重人格等ちょっと間違えるとなんでもありになってしまい、陳腐化してしまう材料をうまくあわせ、驚いたことに最後には悲恋物語になっていた。

宗教団体描写である団体を思いだしたが、小説だと割り切って受け入れられれば、楽しめると思います。

引き込まれる
元々ミステリーという括りが好きではないので、岡嶋二人時代の本は読んだことがありません。
しかしソロになってからの作品は本当にポテンシャルが高く高品質な小説です。この作品も例外ではありません。

とても悲しい小説ですが、とても心に残ります。

大げさなコピーも納得
ある日突然、頭の中に謎の声が鳴り響く。丁度そのとき、宗教指導者が謎の死を遂げた。声の正体は?指導者の関係は?

構成はシンプルなものの、最初から惹きこまれる内容で最後まで飽きさせなかった。「ミステリー、SF、恋愛小説、すべてを融合した奇跡的傑作」という多少、大げさにも取れるコピーも許せると思った。

どうでも良いことではあるが、この物語の中の言葉などで某宗教団体を思い浮かべてしまった。別に欠点でも何でもないのであるが。